Mac バックアップ — Time Machine+クラウド+暗号化外付けSSD
Time Machine のセットアップ、Backblaze/iCloud クラウド併用、暗号化外付けSSD、4つの実践的リカバリシナリオ。
「バックアップしていないコードは、いつか必ず消える。」開発者のマシンをバックアップするのは、休暇の写真を保存するのとはわけが違う。git リポジトリ、SSH キー、1Password の Vault、dotfiles、開発環境——失ったときの復旧コストは計り知れない。バックアップとはデータ保存ではなく、リカバリ能力の保証だと考える — バックアップするだけでなく、復元できることを確認して初めて意味があるからだ。
このガイドでは 3-2-1 バックアップルール(3 つのコピー、2 種類のメディア、1 つのオフサイト)を Mac に適用する方法を説明する。Time Machine+外付け SSD+クラウドバックアップ、そして 4 つのリカバリシナリオをカバーする。
対象:macOS 14 以降のユーザー。法人マシンは雇用主のポリシーを優先すること。
TL;DR
- Time Machine — 外付け SSD または NAS への自動時間バックアップ(ベースライン)
- Backblaze — クラウドバックアップ(月額$9、無制限)、または iCloud Drive+Photos
- 開発者資産を追加する: dotfiles → /mac/dotfiles(Git)、SSH キー → /multi-os/password-manager(1Password)
- リカバリをテストする: バックアップするだけでなく、復元できることを確認する
- 外付け SSD を暗号化する —
diskutil apfs encryptVolumeまたは Finder で右クリック
前提条件
- macOS 14 以降+管理者アカウント
- 外付け SSD または NAS(Time Machine 用)— Mac 内蔵ディスクの 2〜3 倍のサイズ
- (任意)有料クラウドバックアップサービス
1. Time Machine だけでは不十分な理由
Time Machine には次の弱点がある:
- 外付けドライブごと紛失・盗難 — 完全消滅(盗難、火災)
- 外付けドライブの故障 — 完全消滅(HDD の平均寿命は 5〜7 年)
- ランサムウェアが接続中の外付けドライブも一緒に暗号化
3-2-1 を適用する:
- 3 つのコピー: 作業ディスク+Time Machine+クラウド
- 2 種類のメディア: SSD/HDD+クラウド
- 1 つのオフサイト: クラウド、または自宅・オフィス外の場所
2. Time Machine のセットアップ(15 分)
2.1 外付けドライブを選ぶ
推奨スペック:
- サイズ: Mac 内蔵の 2〜3 倍(内蔵 1TB → 外付け 2〜3TB)
- インターフェース: USB 3.2 または Thunderbolt(USB-C)
- 種類: SSD 推奨(HDD はバックアップが速いが、遅くて騒がしい)
NAS も使用可能(Synology / QNAP)、AFP / SMB でマウント。
2.2 フォーマット(APFS 推奨)
Disk Utility → 外付けを選択 → 消去:
- フォーマット: APFS
- スキーム: GUID パーティションマップ
- 名前: 例
TimeMachine
Windows と共有する場合は
ExFATを使う——ただし Time Machine は動作しない。別のバックアップ方法が必要。
2.3 暗号化(必須)
Disk Utility または Finder で右クリック:
- 「暗号化」→ パスワード+ヒント
- パスワードを失うとデータは永久に消える
暗号化なしでは、盗難されたドライブからすべてのバックアップが読み取られる。必ず ON にすること。
2.4 Time Machine を有効にする
システム設定 → 一般 → Time Machine → + → 外付けを選択 → 「ディスクを使用」。
オプション:
- 自動的にバックアップ: ON(推奨)
- メニューバーに Time Machine を表示: ON
初回バックアップはディスクサイズによって数時間かかる。以降は 1 時間ごとの増分バックアップ。
2.5 除外項目(スペース節約)
システム設定 → 一般 → Time Machine → オプション... → 除外:
node_modules ← すべての JS プロジェクトに含まれる巨大フォルダ
.next ← Next.js ビルドキャッシュ
target ← Rust ビルドアーティファクト
build ← C/C++ ビルドアーティファクト
Library/Caches ← システムキャッシュ
.DS_Store ← Finder メタデータ
~/Library/Caches 全体を除外すると数 GB 節約できる。
2.6 確認
tmutil status # バックアップの進捗
tmutil listbackups | tail # 最新のバックアップタイムスタンプまたは、メニューバーの Time Machine アイコンで最後のバックアップ時刻を確認できる。
3. クラウドバックアップ(オフサイト)
3 つの選択肢:
3.1 Backblaze Personal Backup(月額$9、無制限)
最高のコスパ。すべてのユーザーファイルをクラウドにバックアップ。外付けドライブ(接続中)も自動的に含まれる。
# https://www.backblaze.com/ から macOS クライアントをダウンロード
# バックグラウンドで動作し、変更時にアップロード注意:個人ユーザーのみ(法人ライセンスは別途)。
3.2 iCloud Drive+Photos(制限あり)
- iCloud Drive: 50GB($0.99/月)〜 12TB($59.99/月)
- Documents / Desktop を iCloud に自動同期
- ⚠️ これは同期であってバックアップではない — 一方で削除すると、もう一方でも消える
- 開発資産(小さなファイルが大量にある)には不向き
3.3 Arq Backup(買い切り$50、BYO S3)
- 自分の S3 バケットまたは Backblaze B2 にバックアップ
- ソフトウェア自体は無料、ストレージ料金のみ
- 強力なオプション(重複排除、暗号化、スケジュール)
4. 開発者資産 — 個別の戦略
4.1 コード(Git)
- ローカルコミット+GitHub / GitLab へのプッシュ — これだけで実質バックアップになる
- ただし未コミットの変更とローカルのみのブランチは対象外 — こまめにコミット・プッシュする
4.2 dotfiles
.zshrc / .gitconfig / ~/.config/* など — chezmoi で Git 管理。新しいマシンでも 1 コマンドで復元。
4.3 SSH キー
- ✅ Time Machine: バックアップ済み(暗号化ディスクは必須)
- ✅ 推奨: 1Password SSH エージェント — Vault でキーを管理(/multi-os/password-manager)
- ❌ GitHub Gist / 平文公開: 絶対 NG
4.4 .env ファイル
- ✅ 1Password のセキュアノートとして保存
- ✅ または
op runを使って実行時に Vault から注入 - ❌ Time Machine だけに頼らない(いつか git に誤ってコミットしてしまう)
4.5 ローカル開発データベース
# Postgres の定期ダンプ
pg_dump -U postgres mydb > ~/backups/mydb-$(date +%F).sqlまたは docker ボリュームのバックアップ:
docker run --rm -v mydata:/data -v $(pwd):/backup alpine \
tar czf /backup/mydata-$(date +%F).tar.gz -C /data .出力を ~/backups に置けば、Time Machine が拾う。
5. 推奨バックアップ頻度
| 資産 | 頻度 | 方法 |
|---|---|---|
| OS+システム | 1時間ごと(自動) | Time Machine |
| コード(未コミット) | 即時(自動) | Time Machine |
| コード(コミット済み) | プッシュのたびに | Git リモート |
| dotfiles | 変更時 | chezmoi コミット+プッシュ |
| 1Password Vault | 自動 | 1Password 独自クラウド |
| 写真・ドキュメント | 毎日(自動) | iCloud Photos+Time Machine |
| ローカル DB | 週次(手動) | pg_dump+Time Machine |
| すべて | リアルタイム | Backblaze(加入している場合) |
6. リカバリシナリオ
6.1 ファイルを誤って削除した
Time Machine UI:
- メニューバーの Time Machine アイコン → 「Time Machine に入る」
- タイムラインをスライド → 過去の Finder ウィンドウ → ファイルを右クリック → 復元
または CLI:
tmutil listbackups
tmutil restore /Volumes/TimeMachine/.../path/to/file ~/Desktop/recovered/6.2 Mac 本体が壊れた(ディスク障害)
新しい Mac、または同じ Mac を初期化した後:
- セットアップアシスタント → 「Time Machine からの移行」
- 外付けを接続 → バックアップを選択 → 復元(数時間)
または部分的に:
- macOS をインストールし、Migration Assistant でユーザーデータのみ移行
6.3 外付けバックアップドライブが壊れた
Time Machine の外付けが壊れた場合:
- クラウドバックアップ(Backblaze)から復元
- または Git リモート+1Password+chezmoi から環境を再構築(数時間)
6.4 ランサムウェア(すべてのディスクが暗号化)
オフラインバックアップがあれば復元できる:
- 外付けはほとんどの時間、接続しないこと
- 実践的パターン: 週に一度外付けを接続し、Time Machine にバックアップさせてから切断
- または、クラウドバックアップのバージョン管理を使う(ランサム発生前のバージョンを復元)
Backblaze はデフォルトで 30 日間のバージョン管理を維持。追加料金で 1 年間保持可能。
7. 確認
7.1 バックアップが実際に機能しているか
# 最新のバックアップ
tmutil latestbackup
# /Volumes/TimeMachine/Backups.backupdb/MacBook/2026-05-16-103015
# バックアップの整合性チェック
sudo tmutil verifychecksums /Volumes/TimeMachine/Backups.backupdb/...7.2 復元テスト(重要)
四半期に一度:
- ランダムなファイルを削除し、Time Machine から復元する — 成功を確認
- 外付けを切断し、Backblaze からランダムなファイルをダウンロードする — 成功を確認
一度も復元テストをしたことのないバックアップは、実質「バックアップなし」だ。必ず一度試すこと。
8. トラブルシューティング
「Time Machine がバックアップを完了できませんでした」
- ドライブが接続されているか確認(
diskutil list) - Disk Utility → First Aid を実行する
- バックアップディスクが破損している場合: 新しいディスクで最初からやり直す
バックアップに時間がかかる
- 初回はディスク全体(GB〜TB)を対象とするため、時間がかかるのは正常
- 以降は最大 1 時間ごとの増分バックアップ
- 毎時の実行が 5 分以上かかる場合は、大きなファイルを頻繁に変更している可能性がある(例: Docker イメージ)— 除外項目を追加する
「Time Machine は新しいバックアップを作成する必要がある」が繰り返される
- ディスクの破損またはバックアップチェーンの破損
- 安全なタイミングを待ってから、
tmutil delete <古いバックアップ>で削除し最初からやり直す
macOS Sequoia で外付け SSD が認識されない
- USB-C ケーブル・ハブの互換性(Apple 純正または認定ケーブルを使う)
- SMC リセット(Intel Mac)または NVRAM リセット
- 別のポートを試す
1Password Vault はどのようにバックアップされるか
- 1Password 側で独自のクラウドバックアップを管理(Apple サーバー+AWS)
- 追加で: 緊急キット(PDF+Secret Key+マスターパスワード)を印刷して安全な場所に保管
- 法人 Vault は個別にバックアップされない — IT ポリシーを確認すること
Backblaze が一部のファイルを見逃した
- Backblaze は
node_modulesなどのフォルダをデフォルトで自動除外する - クライアントの「設定」で除外項目を確認し、重要なフォルダが含まれているかチェックする
9. 次のステップ
- Mac セキュリティ(FileVault・ファイアウォール) — /mac/security-firewall
- dotfiles の管理 — /mac/dotfiles
- パスワードマネージャー — /multi-os/password-manager
- ファイル同期(Syncthing) — /multi-os/file-sync — バックアップとは異なるユースケース
参考リンク
更新履歴
- 2026-05-16: 初稿。Time Machine+クラウド+開発者資産戦略+4 つのリカバリシナリオ+6 つのトラブルシューティングケース。